絵の具|「アクリル」とは?「アクリルガッシュ」との違い

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「アクリル絵の具」と名前が似ている絵の具で「アクリルガッシュ」という絵の具がある。この二つの違いはどこにあるのだろうか。


アクリルの絵の具

[アクリルの絵の具]が誕生したのは1970年頃。もともと工業用ペイントから発達したもので、比較的新しい絵の具なのです。

なぜ「アクリル」と呼ばれているのかというと、その理由は絵の具の原料にあります。

まず、ほとんどの絵の具は
「顔料」+「バインダー(=糊、接着剤、展色剤)」
でできている。

絵の具|「顔料」とは?

そして一般的に、「バインダー」が何になるかで絵の具の名称が区分されます。

(例)
[顔料]+[アラビアゴム]→[水彩絵の具]
[顔料]+[乾性油]→[油絵の具]

[アクリルの絵の具]の原料は、「顔料」という色を帯びた粉と、「アクリル樹脂」という非常に安定性の高いバインダーです。このことから「アクリル絵の具」と名付けられています。

【特徴】
・水で溶いて描くことができるが、乾くと耐水性になる。
・速乾性がある。
・紙やキャンバスだけでなく、ガラスや石などにも描ける。

実に汎用性の高い絵の具なので、現在のアーティストは[アクリルの絵の具]を使って制作することが多いです。ただ、アクリル絵の具は発明されてからまだ歴史的に浅いこともあり、長期保存に向いているかどうか、未知な部分があります。
参考:ターナー色彩株式会社|TECHNICAL information|油絵具とアクリル絵具の寿命に関する考察

もしかしたら油絵より長く保存できるかも?とも言われていますが、まだまだ研究段階です。


「アクリル」と「アクリルガッシュ」の違い

「アクリル」と「アクリルガッシュ」は、双方とも「顔料+アクリル樹脂」でできていることには変わりありません。

唯一の違いは、「透明」か「不透明」かにあります。

絵の具|「透明」「不透明」とは?


アクリル
アクリル(Liquitex ACRYLIC Regular type)

【特徴】
・透明、半透明に見える
・塗るとツヤのある画面になる
・絵画的な表現に向いている

アクリル絵の具は、色にもよりますが、顔料が小さくてアクリル樹脂が多めに配合されています。そのため、絵の具が乾くと「透明」「半透明」に見えます。

この透明・半透明色による色の塗り重ねによって、油絵のように奥行きのある表現も可能になります。また、アクリル樹脂が多いので、全体的にツヤのある画面を作ることができます。


アクリルガッシュ
アクリルガッシュ(TURNER ACRYL GOUACHE)

「アクリルガッシュ」の「ガッシュ」とは、「gouache:不透明」のこと。つまり、[不透明のアクリル絵の具]ということです。また、絵を描く時に下地などに使う「ジェッソ」もアクリルガッシュに分類されます。

ところで、アクリルガッシュと言えば、中学校の美術で使ったことがある人が多いのではないでしょうか。また、芸大・美大でデザイン科などの受験でも、アクリルガッシュが使用されることは多いです。その理由の一つに、デザインに向いていることがあげられます。

芸大・美大に行く意味はあるのか|実体験をもとにした芸大・美大のメリット・デメリット

【特徴】
・不透明に見える
・ムラが出にくい
・ツヤ消し・マットな画面になる
・デザイン的な表現に向いている

アクリルガッシュは、色によりますが顔料の粒が大きく、アクリル樹脂が少なめに配合されています。そのため、絵の具が乾くと不透明に見えます。

そして、アクリルガッシュは顔料の粒が大きいことから、大きな面積をムラなく塗るのに向いています。また、ツヤのあるアクリル樹脂が少ないので、乾くとツヤ消し・マットな画面になります。

しかし、顔料の粒が大きくアクリル樹脂が少ないことから、ひび割れが起きやすく、長期保存にはあまり向いていません。


「アクリルガッシュ」が誕生したワケ

アクリルガッシュが誕生したのは1982年。アクリル絵の具はアクリルガッシュより先に発売されていました。しかし、先に登場したアクリル絵の具は、どちらかというと絵画的な表現に向いており、デザイナーなどの間ではあまり流行りませんでした。

現在は「Illustration」や「Photoshop」などデジタル画面上でデザインすることが多いですが、当時は手描きが主流。そういうこともあって、当時のデザイナーたちが好んで使っていた画材は[不透明の絵の具]のひとつである「ポスターカラー」でした。

ポスターカラーはその名の通りポスター制作用の絵の具で、ムラなく塗ってマットな画面に仕上げることができます。アクリルガッシュは、デザイン仕様を目的にポスターカラーのような[不透明のアクリルの絵の具]として作られました。

「アクリル絵の具」誕生の歴史