絵の具|「顔料」とは?

ART

絵の具など色の原料になるものを「顔料」や「染料」といいます。

【色の原料】
 └ 顔料
 └ 染料

顔料と染料は、どちらも色を帯びた粉末です。

しかし、染料の方が分子レベルで圧倒的に細かい粒子で、水や油などに溶けることができる可溶性です。染料は、布や紙などの繊維の間に染み込むことで色を染めます。

一方、顔料は染料と比べると粒子が大きく、水や油などに溶けない不溶性。「メディウム(顔料を定着させる媒体となるもの)」のような「バインダー(=糊、接着剤、展色剤)」を加えて、布や紙などの表面に定着させて色を着けます。

もし染料を原料にした油絵の具を使うとすると、筆が染まったり、重ね塗りをすると下に塗った色が溶けて滲んだり濁ったりします。そのため、絵の具の原料は、不溶性である顔料(または不溶性にした染料)が向いています。

絵の具|「染料」とは?


顔料の種類

【顔料】

 └【無機顔料】
   - 天然鉱物顔料(天然無機顔料)
   - 合成無機顔料

 └【有機顔料】
   - 天然有機顔料
   - 合成有機顔料

 └【体質顔料】

など

他にも、サビを防ぐ「防錆顔料」や、メタリック装飾や保護効果のある「金属粉顔料」、蛍光色のような「特殊顔料」など、種類があります。


無機顔料

「無機顔料」とは、土や鉱石などの無機質なものからできた顔料のことです。無機顔料はさらに「天然鉱物顔料」と「合成無機顔料」に分類されます。


天然鉱物顔料(天然無機顔料)

19世紀以前は、色を作る原料として「天然鉱物顔料(天然無機顔料)」が多く使われていました。「オーカー」「シエナ」のような、土からできた「土性顔料」や、鉱石を細かく砕いてできた鉱物の顔料があります。

天然鉱物顔料は、何億年という果てしない時間をかけて自然に形成されたもの。そのため、耐熱性・耐光性に優れ、変色しにくいのが特徴です。

一方、粒子が硬かったり粗かったり、また着色力に限界があったりします。また、天然物であるため採れる量にも限りがあります。時に、「ウルトラマリン 」の顔料として使われる宝石「ラピスラズリ」のように、金同等かそれ以上で取引される高価な顔料もあります。

色の歴史|海を超えて旅した青


合成無機顔料

「合成無機顔料」とは、18〜20世紀初頭の近代科学によって、開発された「人工顔料」のこと。クロム・カドミウム・マンガン・コバルト・亜鉛などのような、天然鉱石や金属の化学反応で得られた酸化物や化合物が、顔料として使用されています。

天然顔料では出せない色や、先にあげた「ウルトラマリン 」のように高価な顔料を必要とする色も、合成技術でそれと似た色を作ることにより、「代替色」として安く供給できるようになりました。

絵の具|「ヒュー」「チント」「ネオ」「ノーバ」とは?


有機顔料

「有機顔料」とは、有機質なものからできた顔料のことです。

動物や植物のような有機物から原料を得ていたことから名付けられましたが、現在は研究開発によって石油などから合成されるものが大半(=合成有機顔料)。

とはいえ、動物や植物から採れた天然有機顔料のほとんどは、水に溶ける染料に分類されます。

ちなみに、染料を絵の具として用いる場合は、不溶性にした染料を絵の具の「(擬似?)顔料」として、使用します。


体質顔料

「体質顔料」は、広義には無機顔料に属します。「炭酸カルシウム」を主成分とする「白亜」や「胡粉」、「硫酸カルシウム」を主成分とする「石膏」などがこれにあたります。

この顔料は発色の目的よりも、油絵の具に透明性・コシ・のびなどを与えるなど、絵の具の調子を整えるために使用されています。

また、染料をこれに染めつけて、顔料として使用することも。炭酸カルシウムは透明度があり、硫酸カルシウムは半透明なので、色によって使い分けられています。

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました