プールと洗濯機と世界の穴

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この時期になると、小学校のプールを思い出す。

私は、山の中にある小さな小学校に通っていた。プールは屋外にあり、裏山がすぐ隣に見えていた。夏のプールの授業では、体育の授業になると運動場を走って横切り、更衣室へとダッシュする。

プールの裏はすぐ山だったこともあり、たまに更衣室にコウモリがいたり(ぎゃー!)、プールにはアメンボやカエルなどが泳いでいた。プールに入る前に、先生が大きな網でアメンボやカエルをすくって、裏山にリリース。

今考えると、衛生面大丈夫かしら?と思うのだけど、当時の私たちはだいぶ野生じみた環境でも、全然平気でたくましかったようだ。

いつだったか、プールを児童らで大掃除したときがあった。

全校生徒100人と少しの児童数だったため、おそらく全員がその掃除に何らかのかたちで駆り出されたと記憶している。

主に、高学年の子たちが「おおきいプール」を掃除する。私も高学年になった時、デッキブラシを手に持ち「おおきいプール」を掃除した。

同級生たちは、コンクリートの階段にウシガエルが大中小と3匹並んでいるのを発見してはしゃいでいた。いつもと違った時間が流れているのを感じて、今から掃除だというのに、楽しくなってくる。

特に楽しみなのは「洗濯機」だ。

「洗濯機」とは一種のプール遊びの名前だ。みんなでプールの中に入り、同じ方向に歩いて渦を作る。人工的に流れるプール・渦を作る、というような遊び?

普通「洗濯機」は、プールの授業の終わりごろに与えられる自由時間に、みんなの意見が一致したときにやったりする遊びなのだけれど、今回のプール掃除では、排水口への水抜きを効率的にやるため「洗濯機」をやるらしかった。

みんなでプールの中に入って、渦を作る(案の定、反対方向に歩くヤツもいる)。渦が出来上がると、みんなプールから上がって、いよいよ水を抜いていく。

だんだんと水位が下がっていく。遊びでは見たことないくらいの速さで流れる水に、恐怖を覚えた。先生たちも、児童らがふざけてプールの中に入らないよう、厳しく監視を続ける。

吸い込まれてくプールの水をみていると、なんだか、世界に穴があいたんじゃないかと思えてくる。このプールにある大量の水はどこへ流れていくのだろう。

海の中のどこかに、大きな「栓」があり、それを抜くと、海の水がそこにワーッと流れていき、最終的に海の水がなくなってしまう…。SFじみた何かの本で読んだことを思い出します。

水が完全になくなると、みんなでデッキブラシを持って掃除に取りかかる。意外とはっきりとした水色が塗られたプールの底に降り立ち、「プールが異常に青く見えるのは、この色のせいだったんだ」と悟る。

そんな記憶。

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