『精霊の守り人』バルサについて語る

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唐突ですが、私が好きな作品をたくさん生み出している上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』の主人公・バルサが「30歳」という設定が、いいなと思っています。

バルサとはどういう人物かというと、まず、この守人シリーズの主人公にあたります。短槍使いの名手・用心棒稼業を生業にしながら各地を旅している、いわゆる影で生きる武人。百戦錬磨の卓越した武闘技術だけでなく、達観した人生観を持っていて、自分の哲学を貫いて生きている、とても魅力的なキャラクターです。

『精霊の守り人』は一応「児童文学」なわけですが、もしかすると本を読む児童たちの母親くらいの年齢に当たるような「30代の女性」が主人公というのも、他にあまりないのではないかと思います。

ただ、私は小学生くらいの時に初めて『精霊の守り人』を読んだのですが、「30歳」という設定は気になりませんでした。強くてかっこよくて、そしてちょっと影のあるバルサのようなキャラクターは、幼少期から惹かれる魅力があり、夢中で読んでいた記憶があります。




ちょっと話はそれますが。
私は、昔からアニメやマンガをみることが多いです。で、作品の登場人物って、大体13歳〜18歳の10代に設定されてあることが多いと思います。ティーンエイジャー達に向けて制作しているんだから、そうなのかもしれませんが。

でも、今ってアニメやマンガを見るのは、子供だけではなくなっています。大人になっても、マンガやアニメが大好きだという人が多く存在する昨今。

それだけでなく、アニメやマンガを見ている人達への視線もちょっと変わったような気がします。

私が10代の頃は、まだ「アニメやマンガを見ている」と周りに言うなんて、言語道断な世。アニメやマンガはクラスの中で浮いている暗いヤツが見るもの…という空気感が、確かにそこにはありました。中学の頃は、口が裂けてもこれは言えねェ…、なんて思っていましたから。だから、大人になった今でも「アニメやマンガを見るのが好き」って口に出して言うのは、苦手です。

ただ、今はちょっと違う感覚ではないでしょうか。クラスの中の云々、じゃなくて、アニメやマンガは「誰でも」見ているような気がします。

なんだか、あの頃を知っている私からすると、信じられない現象です。

マンガやアニメがトレンドに入っちゃてる時もあるし。絶対表に出ちゃダメでしょ、と思っていたものが、表舞台に立っているようで、変な感じです。

とまぁ、アニメやマンガのようなサブカルの世界にも、色々と認識の変動はあるみたいで、自分もその波にいつの間にやらフワフワと乗っているようです。

ただ、自分が10代後半になると、作者や世間などが作り上げた「ティーンエイジャーへの幻想」みたいなものに、嫌気がさすことも多くありました。当時見ていたアニメやマンガのキャラクターの設定が、10代だったのが多すぎたのかもしれませんが。

少年漫画も少女漫画もアニメも、なんでか知らないけどキラキラとしているティーンたち。

なんだか、現実の、今まさに10代を生きている自分とのギャップに打ちひしがれます。
私(10代当時)って、別に全然自由じゃないし、空っぽだし、世の中はティーンというものを綺麗なものとして見過ぎているのか、それとも誰かの願望が押し付けられている感じがするから不快なんだろうか、と。

そんな時、『精霊の守り人』を読み返したことがありました。

「若さは残っているけど、うら若き娘ではない」という、なんともリアルな設定。ティーンエイジャーへの幻想に辟易していた高校時代の自分にとって、バルサはとても魅力ある女性に見えました。もし、バルサが自分と同じ10代後半とかの設定だったらと考えると、また違っていたかもしれませんが。

本には、バルサが10代の少女だったときの話も描かれています。たくさん失敗して、後悔して、傷ついて、落ち込んで、葛藤して、悩んで、怒って、笑って、たまに調子にのってやらかしたり。なんというか、成長の仕方が泥臭くて人間味があるんです。正解がない感じもいい。

という、上橋先生の描写力・表現力、改めてすごいなァと思ったのでした。これにつきますかね。

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