「F100」「M50」「S20」…
これらの数字は一体何かというと、「木枠(以下:キャンバス)」や「パネル」の大きさを表す、値のようなモノ。
市販のキャンバスやパネルを買うときに、この大きさや比率のことを知っていると、作品作りの幅もけっこう広がるんです。特に「比率」による違いは、鑑賞者に与える印象も違ってくる。知っていて損になることはナイのではないだろうか。
キャンバス・パネルのサイズ表
たくさんの大きさがありますが、全部覚える必要はありません。
私の場合、「M50」と表記があった時に「これくらいの大きさかな?」と、やはり「なんとなく」推測できるので、画集・パソコン・スマホのような実際の大きさが分かりづらい画面で作品を見ているときでも、大まかな予測をするのに役立っています。
号数
大文字のアルファベット【F】【P】【M】【S】(W)と【数字】の組み合わせのことを「号数」といいます。
「号数」は、キャンバスやパネルのサイズを表します。
表記の仕方としては、例えば「F100号」「P50号」などとなります。また、「号」だけを省略して「F100」と表記されたり言われたりすることもあります。この数字が大きくなればなるほど、キャンバスやパネルのサイズも大きくなっていきます。
1000号もあるらしか…
もうそれ壁じゃんね!
そしてサイズが大きくなるごとに、キャンバスやパネルのお値段も高くなっていきます。シンプルな仕組みですね。
この表記法はどこで見かけるかというと、例えば以下の写真ように、キャンバス裏に表記されていたりします。
または、作品集や画集、「キャプション」と呼ばれる作品の情報が記載されたものでも見かけることがあります(号数を使わずに、「○○×○○ mm」等と表記されている場合もある)。
号数の数字=長辺の長さ
号数には、それぞれ決めれられた長辺の長さが設定されています。
「10号」を例にすると、
F10|530 x 455 mm P10|530 x 410 mm M10|530 x 333 mm S10|530 x 530 mm
となり、長辺の「530mm」だけ固定されたまま、短辺の長さだけ変わっていきます。つまり、長辺の長さが分かると号数が分かるという事です。
私は号数を知りたい時、長辺の長さだけを測っています。そして、上のキャンバスの表などと照らし合わせて確認しています。
アルファベット=短辺の長さ
アルファベットには、基本的に【F】【P】【M】【S】の4種類の規格があります。そして、それぞれの長さは【S】>【F】>【P】>【M】の順で短くなっています。
ちなみに、【F】【P】【M】【S】は英語の頭文字をとったものです。
F(Figure)=人物
P(Paysage)=風景
M(Marine)=海景
S(square)=正方形
F(Figure)→人物画 P(Paysage)→風景画 M(Marine)→海景
これらは「美しく描くことができる比率」として設定されていました。
もちろん、
「人物を描くからFサイズにしなきゃ!」
「Fサイズだから人物を描かなければいけない!」
という訳ではありません。
このアルファベット表記は、昔の名残のようなモノ。
また、【S(スクエア)=square】と【W(ダブル) =長辺×2の長さ 】は推測になりますが、近年出てきたものだと思われます。
「SM」って?
冒頭で紹介したキャンバス・パネルの表を見ていただくと分かりますが、「0号」と「1号」の間に【SM】という表記があります。
これは、【SM(サムホール)】といって、これもサイズの名前なんです。
「サムホール」を英語にすると「thumb hold(親指を入れる穴)」になります。「サムホール」はまた、油絵の道具の一つで小型のスケッチ箱のことで、このスケッチ箱は指を入れて支えるパレットのように、箱の底に空いた穴に親指を入れて持つことができます。
こんな感じね。上は、1900年頃のルフラン社のカタログに載っていたものだそうです。
また、このスケッチ箱に収納して持ち歩ける「スケッチ板」のことも「サムホール」と呼ぶようです。このことから、スケッチ箱とスケッチ板の「サムホール」がそのまま、画面サイズ&名前にもなったようです。ちなみに、「サムホール」は日本の画材店が考案して売り出したときにつけた名称で、実は和製英語らしい。
【SM】は、固定されたサイズなので基本的に【F】【P】【M】がつくことはありません。しかし、例外もあります。
<例外>
【SSM(エスサムホール)】→ 正方形の【SM】
【WSM(ダブルサムホール)】→【SM】を2枚つなげたもの
シェイプドキャンバス(変形キャンバス)
キャンバスは四角だけではありません。丸いキャンバスや多角形のキャンバス…。このようなキャンバスは「変形キャンバス」や「シェイプドキャンバス」と呼ばれています。
「シェイプドキャンバス」は特注で依頼して作ってもらったり、画家自身で作ったりします。
画家は時に大工にもなる…
色々なキャンバスを紹介してきましたが、一般的によく使われる&見かけるのは「Fサイズ」だと思います。どんな絵を描きたいか構想してから、その絵に合いそうなサイズを探してもいいし、キャンバスのサイズを見てから、絵の構想を練るのもいいと思います。ぜひ、作品作りに役立ててくださいね。