私が普通に大学に行けたのは、普通のことではなかった

Yちゃん(=私の叔母)の家でお茶した時、私はきまって、Yちゃんの子供の時とか、昔の話を無意識に引き出している。家族のエピソードを聞くのが、単純に私は好きなのである。

その日、引き出したのはこんな昔話だった。

Yちゃんの姉であるSちゃんとその母(=私からすると祖母)の大喧嘩の話だ。

Sちゃんは、感情的になることが少ない人だ。それは、Yちゃんから言われなくとも、私も今までSちゃんと会う中で分かっていたことである。そんなSちゃんが、感情的に喧嘩したなんて、聞いたときはびっくりした。

そのとき、Sちゃんは高校生で、「教職の資格をとって、先生になりたい。だから大学に進学したい」と、母に進路を相談していたらしい

そのことに対して、母は「女が大学に行くなんて…お金の無駄!どうせ女は結婚する!」みたいなことを言って猛反対していたらしい。祖母はザ・昔の人なのだ。

それで朝から言い合っていたところを、幼いYちゃんが見聞きしていたらしいのだ。

「もうよか!!!」

と叫んだSちゃんは、そのまま家を飛び出して高校へ向かった。「Sちゃんが怒ってる…!!」と、そのときのYちゃんは、狼狽したそうだ。

◇◇◇

私は、Sちゃんとは違い、大学に進学することができた(「進学先」ではもめたが)。しかも、芸術・美術系の大学へ、だ。

そのときも、祖母からは「女が大学なんて…」みたいなことをちょっとぼやかれたが、Sちゃんのエピソードほど、ひどく反対はされなかった。

もし、今から20年前に、私が「芸大か美大に行きたい」とか家族に言えば、絶対に大大大大大大大大大大大大反対だろう。

私が普通に大学に行けたのは、普通のことではなかったのだ。

少し前までは、Sちゃんのように、まず親の理解が得られない人が多かった。進学しても「短大卒」で、それは花嫁修行的な面が強い。昔のドラマやマンガの登場人物の経歴設定とか見ていると、「短大卒のOL」みたいな、そういうのが多い。しかも、親の反対を振り切って進学できるほど、女性に経済力はなく、少なからず親からの援助が必要だ。

うってかわって、彼女たちの今は亡き兄(=私の父)は、特に大きな反対もされず、すんなりと大学に進学したみたいだ。

Sちゃんは、それを見てどう思っただろうか。

大学進学時、地方出身者という「壁」を私は感じていたが、Sちゃんは家の中でもすでに「壁」があったのだ。

近年、Twitterとかで性差別やフェミニズムについてのツイートを見かけることが多くなったなぁと思う。しかし、自分が「女」という当事者であるにもかかわらず、他人事のように見ていた。

今回、YちゃんからSちゃんのエピソードを聞いて、

「女であるだけで、できないことがあったし、これからもある」

と、自覚したように思える。でも、自覚したから何か行動するわけではなく、きっと明日も普通に日常を送るのだろう。

しかし、女の私が普通に大学進学できるのは、性差別に対する過去からの長い長いムーヴメントが続いてきたからなんだ、と思った。

そして、それはこれからも続くのだろう。今は、そのムーヴメントを他人事のように見ていたとしても、自分がそのムーヴメントの渦中に着地することも、女である以上、高い可能性を持っているのだと思う。

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