老舗大手文具メーカー「ぺんてる」が販売している12色の絵具セットには、「みどり」や「ふかみどり」ではなく、なぜか「ビリジアン」が入っています。
なぜ、このような聴き慣れない色の絵の具が入っているのだろうか。
ビリジアンはどんな絵の具?
「ビリジアン」は青緑色の安定した強い緑。語源はラテン語の viridis(緑という意味)が由来だと言われています。
そのビリジアンの色の原料になっているものは、「クロム鉄鉱」という鉱石です。
ビリジアンの歴史
1838年|クロムグリーン
フランス・パリの色作り職人であるパネティエ(Pannetier)が、「クロムグリーン」を製造する方法を発明します。
「クロムグリーン」が発明された時、クロムグリーンは「ビリジアン」と呼ばれていたようです。彼と彼の子孫は、その方法を企業秘密とし、長年に渡ってその緑色を作り続けました。
1859年|ギネーグリーン
その後、ギネー(Guignet)が、より安価にビリジアンを製造する方法で特許を取得します。そして、ビリジアンは別名「ギネーグリーン」とも呼ばれるようになりました。
「クロムグリーン」と「ビリジアン」は同じ原料であるクロムから作られますが、製造方法によって化学変化に違い生じ、色が変わります。
【クロムグリーン】←[無水酸化クロム]
【ビリジアン】←[水酸化クロム]
様々な「緑色」の代替色として
安価なビリジアンの発明後すぐに使われ始め、特に印刷業界では「エメラルドグリーン」の代替色として使われました。なぜなら、エメラルドグリーンは強い毒性がある色だったからです。
ビリジアンは従来の色と比べると毒性も弱く、また色あせにくくもあり、他の緑色の代わりに成りえる存在になったのでした。
しかし、安価に作れるようになったといえども、鉱物を顔料にした絵の具というものは、もともと高価なものです。
参考:Pigments thought the Ages|viridian, CAMEO|viridian
現在は「ビリジアン・ヒュー」と呼ばれる「ビリジアンに似せた色」があります。こちらは本物の「ビリジアン」と比べると安い絵の具で、比較的手に入れやすくなっています。
さて、そんなビリジアンが12色絵の具セットの中にあるのには、こんな理由があるそうです。
ビリジアンが12色絵の具にある理由
その理由は、「ビリジアン」の色を絵の具で混ぜて作るのが難しいから。これはビリジアンに限った話ではなく、12色の絵の具は
「混ぜて作れない色」
「混ぜて作るのが難しい色」
が優先的に入っているとのこと。
例えば、
[ビリジアン]+[きみどり]→[みどり]
[あか]+[しろ]→[ピンク]
[あお]+[あか]→[むらさき]
この逆をやろうとするとけっこう難しかったり、またそもそも作れない色があったりします。より広い色幅を作るため、この基準にのっとってビリジアンが採用されたのです。この12色は、選ばれてた時から変わっていないのだとか(2020年現在)。