祖父と土

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祖父の話。

話に聞く限り、私の故郷は昔、随分と貧乏な所だったそうだ。特に祖父の子供時代は、戦前・戦後で何もかもが無い時代。私が生まれたときには、ありがたいことに既に立派な家が構えられており、今では考えられない事ではあるが。

祖父の父(私の曽祖父)は体が弱く、寝たきりで働けなかった。少年時代の祖父の記憶には、病床に臥す父の姿しか見たことがなかっただろうと思う。そのため、祖父と祖父の母(私の曽祖母)の女子供二人で、今にも崩れそうな一家を支えてきたそうだ。

戦争、そして終戦を迎えた少年時代。
家の周りも、住居なのか分からないような所に住んでいる。そんなふうに、同じような貧困状況だったため、みんなは助け合って暮らしていた。

尋常小学校を卒業後、祖父は進学したかったそうだが、貧困のためそれは叶わなかった。祖父の姉(私の大叔母)から聞いたのだが、当時の祖父は、進学できなかった事にふてくされてやけ酒し、畳の上に大の字になって泥酔していたそうだ。手には酒ビンを持ったまま。

そのあと、姉を嫁がせるための必要なお金を稼ぎ、姉は無事にお嫁さんになった。その間に、大工をしている近所の人に教えてもらいながら、自分で家を建てたとか。

そんなふうに、自分のお嫁さんを迎える準備はそっちのけで、随分と苦労と遠回りをしなければならなかったため、祖父は当時としては遅い年齢で結婚する事となったようだ。

そのあとも、やっぱり彼はずっと働き続けた。今まで家を二回建て直し、七年前にせがれ(私の父)を亡くしたが、子供達(私の叔母達)は立派に一人立ちしている。

貧困時代からずっとこの土地で生きてきた祖父にとって、この大きい家と庭の存在は、彼の歴史であり、苦労と成功を証明するものだと思う。

その重み。土地に根深くそれが染み渡っていて、ひしひしと感じられる。

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