今回は、1999年11月21日に発売された『ポケットモンスター金』『ポケットモンスター銀』(以下:『金・銀』)からお届け。
『金・銀』は、前作『ポケットモンスター赤・緑・青・ピカチュウ』の続編である。
また『金・銀』は、10年後の2009年にリメイクされて『ハートゴールド』『ソウルシルバー』で再登場している。こちらは、2004年に発売されたゲーム、ポケットモンスターシリーズ『ファイアレッド』『リーフグリーン』の3年後の世界という設定で物語が始まる。
さて、『ポケットモンスター』シリーズではおなじみの「架空の地方」が登場する。例えば、「カントー地方」は現実世界の関東地方がモデルだ。
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そして「ジョウト地方」は、日本の関西地方(一部中国・四国地方も含む)がモデルである。ちなみに、「ジョウト地方」の「ジョウト」は「城都」「条都」に由来。英語版は、そのまま「Johto Region」。
大阪弁や京言葉を話すキャラクターや「まいこはん」がいたりして、前シリーズの「カントー地方」と比べると、少し地域色が出てきたように思う。
そして、「ジョウト地方」も「カントー地方」のシティ・タウン名と同じように日本の伝統的な和色名が使われているが、少しアレンジが加えられていたように思う。
ワカバタウン|New Bark Town
今回のスタート地点は「ワカバタウン」、ゲームの主人公の故郷である。
「ワカバタウン」の由来となった色は「若葉色|わかばいろ」である。
若葉色は、新緑になる前のやわらかい黄緑色の葉のような色をしている。ちなみに英語では「spring green」だ。実は、若葉色が登場したのは明治時代頃で比較的新しい色である。
英語版は「New Bark Town|ニューバークタウン」である。
【New Bark】
└ New:新しい
└ 樹皮:Bark
ヨシノシティ|Cherrygrove City
ゲーム内の民家の屋根の色は、ピンクで統一されている。
「ヨシノシティ 」の「ヨシノ」という名前は、桜の「ソメイヨシノ」から名付けたのではないかと思われる。
英語は「Cherrygrove City|チェリーグローヴシティ」である。なかなかフルーティな名前だ。
【Cherrygrove】
└ cherry:さくらんぼ
└ grove:果樹園
キキョウシティ|Violet City
ゲーム内は、紫色で統一された民家が見られる。
「キキョウシティ」の由来となった色は「桔梗色|ききょういろ」である。
桔梗色はその名の通り、秋の七草の一つである「キキョウ」の花のような濃い青紫をしている。
英語版は「Violet City|ヴァイオレットシティ」である。ヴァイオレットは青みを帯びた紫色で、「菫色|」と和訳される
同じ紫色の系統である「Purple|パープル」とよく混同されるが、パープルの方が少し赤みを帯びている。
ヒワダタウン|Azalea Town
ゲーム内は、淡い茶色で統一された民家が見られる。
「ヒワダタウン」の由来となった色は「檜皮色|ひわだ/ひはだ いろ」である。
檜皮色の「檜」とはヒノキのことで、ヒノキの皮のことも「檜皮」と呼ぶ。檜皮色はヒノキの樹皮のように黒みがかっており、赤褐色の色に見える。
英語版は「Azelea Town|アザレアタウン」である。
アザレアは、ツツジの一種である「アザレア」の花の色。別名「ツツジ色」とも言い、やや紫がかった鮮やかなピンク色をしている。アザレアは、昔から品種改良が盛んに行われてきた花であり、色んなピンク色のアザレアがある。そのため、アザレアと言っても一つに決まった色はないようだ。
コガネシティ|Goldenrod City
「コガネシティ」は現実世界の大阪がモデルである。
「コガネシティ」にある「リニアえき(駅)」は、「コガネシティ」と「カントー地方」の「ヤマブキシティ」をつなげる交通機関だ。現実世界の東海道新幹線みたいな感じ。ちなみに、「ヤマブキシティ」は「カントー地方最大の都市」という設定で、東京がモデルだ。
「コガネシティ」の由来となった色は「黄金色|こがねいろ」である。
小金色は、少々赤みがかった黄色をしている。
また、金のことを「こがね」といい、江戸時代は大判・小判のことを「山吹色|やまぶきいろ」と称していたこともある。このように、「黄金色」と「山吹色」はしばしば同義語で扱われることがあった。その理由は、「山吹色」の方が古くから黄色を表す代表的な色であったからだと言われている。
英語版は「Goldenrod City|ゴールデンロッドシティ」である。
ゴールデンロッドは、日本では「セイタカアワダチソウ」という外来雑草のこと。ちなみに、この植物はアメリカ・インディアンたちの重要な薬草としても用いられてきたそうだ。
エンジュシティ|Ecruteak City
「エンジュシティ」は京都がモデルである。ゲーム内は、京都のように道が碁盤の目状になっている。
1997年に刊行された『ポケットモンスター公式ファンブック』では、「日本の伝統的な建築物がある場所」を「オールドシティ(Old City)」としている。これが、「エンジュシティ」の元になっていると考えられる。
参考:bulbapedia
「エンジュシティ」は「縁寿」という言葉や、植物の「槐|えんじゅ」、「臙脂色|えんじいろ」が由来とされている。
英語版では「Ecruteak City|エクルチークシティ」である。2つの色の名前が入っているようだ。
【Ecru|エクリュ・エクル】
日本語の「生成色きなりいろ」に該当。明治以降、「Ecru」を訳すときに使われるようになる。実際のエルクは黄色みがかった白色をしている。
【Teak|チーク】
木のチークのことだと思われる。チークの木は水に強く、船の材料などに使われたりする。
アサギシティ|Olivine City
「アサギシティ」は、神戸の港町がモデルとなっている。
「アサギシティ」の港からは「こうそくせんアクアごう」が出ている。この船は、「ジョウト地方」の「アサギシティ」と「カントー地方」の「クチバシティ」を結ぶ連絡船である。
「アサギシティ」の由来となった色は「浅葱色|あさぎいろ」である。
浅葱色は「蓼藍|だてあい」で染めてできる色で、明るい青緑色をしている。また、浅葱の「葱」はネギと読み、薄いネギの葉に因んだ色として、平安時代から見られる伝統色である。
たまに、「葱」と「黄」のじが混同されて「浅黄」となっている古事書があるようだが、「浅葱」と「浅黄」は全く別の色。「浅黄」は「あさきき/あさき/うすき」といい、薄い黄色である。
英語版は「Olivine City|オリビンシティ」である。
「Olivine」とは、かんらん石のこと。カンラン石がオリーブ色をしていることから「オリビン」と名付けられたとか。その名の通り「オリーブ色」に近い色をした鉱石だ。宝石名では「ペリドット」で8月の誕生石でもある。
タンバシティ|Cianwood City
ゲーム内は、濃い青で統一された民家が見られる。
「タンバシティ」の由来となった色は「胆礬色|たんばいろ」である。
胆礬色とは、鉱物の「胆礬」の色のことで、青く半透明の色をしている。
日本で採れなさそうな色をしているが、足尾銅山のような銅を産出する鉱山で見つかることがあったようだ。
英語版は「Cianwood City(シアンウッドシティ)」である。
【Cian|シアン】
古代ギリシア語で「cyanos|暗い青」から派生した、やや緑がかった青色。絵の具の三原色の一つ。
これに「wood:木」が組み合わさってできています(なぜ)。
チョウジタウン|Mahogany Town
「チョウジタウン」は、「いかりのみずうみ」が近くにあること、また「にんじゃのさと」と言われていることから、「甲賀|(滋賀県)」がモデルではないかと思われる。
「チョウジタウン」の由来となった色は「丁子色|ちょうじいろ」である。
丁子色は、丁子の蕾を乾燥させて作った染料で染めた色で、鈍い黄色に少し赤みのある色をしている。丁子の蕾また、染料の他に漢方薬の生薬や香辛料としても使われてきた。
英語版は「Mahogany Town|マホガニータウン」である。
マホガニーの色は、暗い赤褐色をしている。その名の通り「マホガニー」の樹の色から名付けられている。マホガニーは高級木材として家具などに使われている。
フスベシティ|Blackthorn City
「フスベシティ」は、イブキやワタルなどの「ドラゴンタイプつかい」のトレーナーの出身地として知られている。
「フスベシティ」の由来となった色は「燻色|ふすべ/いぶし色」である。
燻色は、燻し(=煙に当てて責めること)をかけた色のこと。特に、ワラや硫黄を熱し、その煙で燻すことで、銀や銅などの金属につけられる色で、曇った感じの薄黒くすすけた色をしている。
英語版は「Blackthorn City|ブラックソーンシティ」である。
ブラックソーンとは、「スピノサスモモ」という低木のこと。濃紫色の「スロー」と呼ばれる果実をつける。
【spinosa】
└ ラテン語で「トゲ」の意味
【blackthorn】
└ black:黒い(樹皮)
└ thorn:トゲ
アイルランドでは伝統的に、スピノサスモモの木を杖や棍棒に使っている。(さすがアイルランド…妖精の国…!)
多くの「ドラゴンタイプつかい」の出身地として名を馳せる「ブラックソーンシティ」。「ドラゴン」というと西洋的な生物のイメージがあるためか、日本の中に異国(西洋)があるような感覚になる。
まとめ
前回のカントー地方のシティ・タウン名の色を調べた際、ゲーム製作側が決めたっぽい「ポケモンのタイプ=イメージカラー(例:みず(水)タイプ=水色)」が、タウン・シティの名前との結びつきを表しているように思えた。
ジョウト地方のタウン・シティ名は、はんなりとした伝統色が選択された印象がある(関西、特に京都らしさ?)。
次回は「ホウエン地方」を調べてみようと思います!