【カントー地方編】ポケモン|マサラタウンの英語版はパレットタウン!名前や由来を調査

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出典:BULBAPEDIA|Kanto

2004年1月29日、任天堂から『ポケットモンスター ファイヤーレッド』『ポケットモンスター リーフグリーン』(以下|FRLG)が発売された。このゲームは、ポケモンの世界の「カントー地方」という架空の地方が舞台になっている。

「カントー地方」は、現実世界の日本の関東地方がモデル。そして、日本の伝統的な和色名が「カタカナ表記」でタウン・シティ名に。ゲームの主人公は、このタウン・シティを巡りながら旅をする。

出典:任天堂|ポケットモンスター ファイヤーレッド・リーフグリーン

ちなみに『FRLG』は、1996年2月27日に発売された『ポケットモンスター 赤』『ポケットモンスター 緑』(以下|赤・緑)のリメイク版。

出典:ポケモン|ポケットモンスター 赤・緑
参考:任天堂|ポケットモンスター赤・緑


余談だが、ポケモンのゲームをやったことがある人だったら分かる感覚かもしれない。ゲームのタウン・シティの音楽を聞くと、

「あ〜マサラタウンだ!」
「シオンタウンだ!」

と思い出しては、ノスタルジアな気分になる人が多いのでは?

そんなこんなで、歳を重ねて大人になった私は、ゲームに出てきたタウン・シティに使われている和色名を調べてみた。懐かしいモノ大好きなそこのあなたと共有できたらと思う。

調べていく中で海外版も気になり、ついでに英語版もリサーチ。コチラもとても面白かったのでご紹介。


マサラタウン|Pallet Town

ゲームのスタート地点であるマサラタウン。町のシンボルカラーは白。

「何色にも染まっていない汚れなき色」、物語の始まりを意味している。「まっさら(真っ新)」から来ているのだろうか。小説版(首藤剛志著)では、かつては「マッシロタウン」という町名だったが、ポケモントレーナーの「オーキド・マサラ」の功績を称えて改名したという設定らしい。

そして、「マサラタウン」の英語版は「Pallet Town|パレットタウン」である。

直訳で「ホワイトタウン」とかではなく、絵具を混ぜて色を作る「パレット」を選ぶところが、なんだか粋である。これから色んな経験をする主人公が、旅を通して「自分の色」を作っていくようなイメージを与えてくれる。


トキワシティ|Viridian City

町のシンボルカラーは緑(常盤色|ときわいろ)。ゲーム内では、森に囲まれた町に緑色で統一された民家が見られる。


「トキワシティ」の由来となった色は「常盤色(常磐色とも)」である。

常盤色は、古くから使われている日本の伝統的な色の名前だ。松などの常緑樹のように濃い緑色をしている。常盤色はまた、永久不滅の岩を指して言うこともあり、永遠・長寿・繁栄を表す。


英語版は「Viridian City|ビリジアンシティ」である。

ビリジアンは青緑色の顔料のことで、19世紀にフランスの科学者によって発見・発明された。ラテン語の「viridis:緑という意味」が由来と言われている。

色の歴史|「ビリジアン」12色絵の具のセットにある理由


ニビシティ|Pewter City

町のシンボルカラーは灰(鈍色|にびいろ)。ゲーム内は、石畳が敷かれた道路にグレーで統一されている民家が見られる。


「ニビシティ」の由来となった色は「鈍色」である。

鈍色の語源は、刃物などの刃が切れなくなること「鈍る|にびる」に由来する。また、鈍色には淡い色から濃い色まであり、平安時代は「貴族の喪服の色」として使われていた。


英語版は「Pewter City(ピューターシティ)」である。

ピューターとは、ヨーロッパで昔から利用されてきた、銀白色をした金属の名前。その主成分はやわらかいスズで、それに硬度の高い他の金属を足すことで、適度な柔軟性がありつつも強度のある素材になる。その歴史はとても古く、約2000年前には既に中国で作られていたのだとか。


ハナダシティ|Cerulean City

町のシンボルカラーは青(縹色|はなだいろ)。ゲーム内では、空色で統一された民家が見られる。


「ハナダシティ」の由来となった色は「縹色」である。

縹色はまた「花田」や「花色」とも書く。「ツユクサ」の花の色から名付けられ、薄い藍色をしている。

ツユクサ

英語版は「Cerulean City|セルリアンシティ」である。

「Cerulean bule|セルリアンブルー」は緑色を帯びた明るい青で、絵の具の名前などに使用されている。また、「空色」を意味するラテン語の「caelum」が語源と言われている。


クチバシティ|Vermillion City

町のシンボルカラーは「橙|だいだい」。ゲーム内では、オレンジ色で統一された民家が見られる。

photo by みもり|横浜(2019年11月撮影)

また、「クチバシティ」は現実世界の横浜がモデルとなっており、ゲーム内でも港がある。


「クチバシティ 」の由来となった色は「朽葉色|くちばいろ」である。朽葉色は、一般的には茶色っぽい落ち葉の色を指して言う。

しかし、平安時代では

「赤朽葉」← 赤みが強い色
「黄朽葉」← 黄色みが強い色
「青朽葉」← 青みが強い色

と、落ち葉の微妙な色の違いを見分けていたらしく、「朽葉四十八色」といわれるほど。この微妙な色の違いがあるとしたら、

橙色に近い色をした朽葉色もあるのかもしれない(個人的に「ダイダイシティ」でもなんかカワイイから、私は別にいいと思う)。

ある意味、「クチバシティ 」の方が(子どもで「朽葉色」を知っている子はあまりいないと思うし)、新鮮な音の響き・新しさがあるので、「初めて訪れた町だ!」というような、冒険心をくすぐられる気がする…。


英語版は「Vermilion City|バーミリオンシティ」である。

バーミリオンは日本でいう「朱色|しゅいろ(銀朱とも。硫黄と水銀から作られる人工顔料)」のことだ。真っ赤というより、少し黄色みがある赤色である。

「橙=orange」だから、「Orange town|オレンジタウン」だと思っていた(安直)。海外の子ども達の「色の知識」事情は知らないけど、こちらも新鮮な音の響きを考えて選択?


シオンタウンLavender Town

町のシンボルカラーは紫(紫苑色|しおんいろ)。ゲーム内は、岩山に囲まれた町に紫色で統一された民家が見られる。この町にある「ポケモンタワー」には、ゴーストタイプのポケモンが多く出現。

シンボルカラーの紫は、「ゴーストタイプ=紫」のイメージからきているのだろうか。それとも「紫=ゴーストタイプ」のイメージを、ゲーム制作会社の意図によって刷り込まれているのだろうか…。


「シオンタウン」の由来となった色は「紫苑色」である。

紫苑色は淡い青みがかった紫色をしている。「シオン」の花の名の色から名付けられたそうだ。

シオン

シオンの花は可愛いが、シオンタウンは物悲しいメロディーが流れるちょっと暗い場所である(好きな人もいそうだが)。小学生の頃、「シオン」だけ聞くと、「死」とか「怨」というイメージを勝手に想像していたなぁ。


英語版は「Lavender City|ラベンダーシティ」である。ラベンダーは、その名の通り「ラベンダー」の花の色から名付けられた。

可憐なイメージのある「ラベンダー」の響きが、町のテンションと合ってないような気もするけども…。しかし、子供の頃の自分が「シオン」の色や花のイメージが定着する前に「シオンタウン」の物悲しいイメージがついたように、海外の子ども達の間でも同じ現象が起きてたりするのだろうか。


タマムシシティ|Celadon City

タマムシシティは「カントー地方」第二の都市。町のシンボルカラーは虹(玉虫色|たまむしいろ)。
ゲーム内は、明るい緑色で統一された民家が見られる。


「タマムシシティ」の由来となった色は「玉虫色」である。

玉虫色の「玉虫」とは、あの虫の「タマムシ」のことだ。タマムシの羽のように、金緑色や金紫色のようなメタリックの色をしており、光の具合でいろんな色に見える。

タマムシ

英語版は「Celadon City|セラドンシティ」である。シンボルカラーが虹だから、レインボーシティになるのかと思った(安直)。

セラドンとは、青磁色のような色のこと。また、青磁器のもつ色の珍しさから、その色が民間に出回ることを禁止したため、「秘色|ひしょく・ひそく」とも呼ばれていた。


セキチクシティ|Fuchisa City

町のシンボルカラーは桃(石竹色|せきちくいろ)。ゲーム内は、桃色で統一された民家が見られる。


「セキチクシティ」の由来となった色は「石竹色」である

石竹色は「セキチク」の花のように淡い赤色をしている。「セキチク」という名前は、セキチクの葉が竹の葉に似ていることから名付けられたとか。

セキチク

英語版は「Fuchsia City|フクシアシティ 」である。フクシア(フクーシャとも)は、「フクシア」の花の名前にちなんで付けられた色の名前。

フクシア

ちなみに、石竹色は英語では「チャイニーズピンク」だ。そのままだとチャイナタウンみたいになるから、こちらも花の名前から町の名前を名付けたのだろうか?


ヤマブキシティ|Saffron City

ヤマブキシティはカントー地方の中心都市で、モデルは東京だ。町のシンボルカラーは金色(山吹色|やまぶきいろ)。ゲーム内では、黄色で統一された民家が見られる。


「ヤマブキシティ」の由来となった色は「山吹色」である。

山吹色は「ヤマブキ」の花のような鮮やかな赤みがある黄色をしている。

ヤマブキ

また、この色が黄金にも見えることから、「黄金色|こがねいろ」ともいい、江戸時代の隠語で「山吹」というと「賄賂の小判」だったとか。

なんだかそういうことを聞くと、ヤマブキシティにはロケット団のアジトがあるので、金を使って裏取引が盛んに行われよるアブナイ都会ってカンジがします。


英語版は「Saffron City|サフランシティ」である。

「Saffron Yellow|サフランイエロー」は、サフランの「雌蕊|しずい(=写真の黄色い部分)」から作られる黄色。ヨーロッパでは紀元前1,000年から黄色の染料として使われている。「サフランイエロー」という色の名前も13世紀頃からあり、歴史ある色である。

サフラン

グレンタウン|Cinnabar Island

グレンタウンは火山島で、町(島)のシンボルカラーは赤(紅蓮色|ぐれんいろ)だ。


「グレンタウン」の由来となった色は「紅蓮色」である。

といっても、紅蓮色の具体的な色は決められていない。

元々は、仏教用語の「紅蓮地獄」のことである。紅蓮地獄は八寒地獄の一つで、あまりの寒さに皮膚が裂け血が流れることで、「紅蓮花(紅色の蓮華)」のように真っ赤になることに由来する。

また、激しく燃える炎の例えでもある。ほのお(炎)タイプ使いのジムリーダー・カツラがいるから、ここではきっと後者だろう。


英語版は「Cinnabar Island|シナバーアイランド」である。

シナバーは鮮やかな赤色で、日本でいう「辰砂|しんしゃ」の英訳。天然の顔料である辰砂は高価な絵の具だ。また、とても乾きにくい。いい色をしているが扱いづらい。

色の歴史|「辰砂」紀元前2000年からの赤


まとめ

「ポケモン」の中に出てくる町の名前が、日本の伝統的な色の名前が付けられたということを知ったのは、ずいぶんと時間が経ってからだ。

タマムシシティの「玉虫色」とヤマブキシティの「山吹色」はなんとなく想像していたが、それ以外は全く知らなかった。知ったことで、何かが崩れたとかそういうわけでもなく、逆に裏設定(ほどでもないと思うが)を知れた喜びがあった。

また、タウン・シティ名は、日本語版・海外版であっても、子ども達からしたらある特定の色を想像しにくいような、知られている色からちょっとズラした名前を付けているように感じた。そのため、元々すでにあるはずの色の名前なのに、子どもからしたらきっと、初めて聞いた音のようであるから、「新しい町に来た〜!」というような喜びを感じてしまう。

しかし面白いことに、当時は和色名の知識がないのにもかかわらず、もともとの言葉が持っている日本的な言葉の響きに、違和感を感じなかったというか、無意識のうちに惹かれるものがあったというか。形容するのが難しいのだけど、何か、遠い民俗的な、ルーツというか、自分と日本とのとっかかりみたいなものを感じていた。