二風谷での会話|アイヌの刺繍と生きる女性

JOURNEY

大学4年の夏休み、私は北海道一周の一人旅をしていました。

アイヌの聖地と呼ばれる二風谷を訪れた時、美しいアイヌの文様を刺繍する、ある女性とお話ができました。彼女はカイさんのお母さんです。

カイさんとお話している時、私が大学で絵を描いていることを話したところ、

「俺のおふくろも、美大出てるんだよ。いや出てはないか、中退したって言ってたな。確か女学生時代ここに来てさ、そこで俺のオヤジに出会って、アイヌの文化にハマっちゃって。大学中退してからここに住んでんの」

「めっちゃロックな生き方してますね…!」

ロックという言葉の意味をよくわからず使っていますが、なんかそんな感じで生き方がかっこいい!と純粋に思いました。

「すぐそこで刺繍してるからさ、会ってきなよ」




チセ(家)に入ると、ラジオを聴きながら刺繍をする女性がいました。

さっき、息子さんからお母様のお話を聞きまして…と話しかけると、

「うそ〜そんなこと言ったの!あの息子は〜!」

と、楽しそうに笑っていました。見た目も心も若々しくて、実年齢よりすご〜く若く見えました。

カイさんから聞いた彼女のロックな生き方に、すごいです!みたいな感想を述べたところ、

「そんなことないよ〜」

と言ってました。
謙遜するところも、カッコいい(すでにファン)。

大学に通ったのは少しの間だったけど、その間に芸術を学んでいたおかげもあって、二風谷に来てからアイヌの刺繍と触れ合ううちに、自分の中の「芸術的価値観」にも磨きがかかっている、と話していました。

「持論だけどね(笑)」って言う姿もかっこよくて、シビレます。

彼女が刺繍をしているアイヌの模様というのは、特に「太く白い線」と「藍染の生地」の色のコントラストが特徴的です。このハッキリしたコントラストによって、模様が浮かび上がってきます(かっこいい)。

写真は「二風谷アイヌ文化博物館」に展示してあったもの

2019年9月撮影|アイヌの刺繍

アイヌ文化が根づいたのは北の大地。しかし、不思議なことにアボリジニのような南アジアっぽい感じもしてきます。

「この空白がカッコいいんだよね!」

と、生き生きと語る彼女の姿が、今も脳裏に焼きついています。




ちょうどそのころ、「仕事」についていろいろと考えることが多かった自分。彼女に、今の時代に仕事を選ぶなら何がしたいですか?と聞いたら

「CGをやりたいね」

と言っていました。かっこよすぎるやろ…!

「でもね、好きなことをして生きるのは大変だよ」

この言葉、とてもシンプルですが、彼女が口から出ると、ものすご重くて深みがありました。




この時私は、もっと話したいことがあったのだけど、うまく自分の考えを話すことができませんでした。

カイさんの時もそうだったのだけど、私と彼らの人生の「経験値」の違い、そして、私の話す言葉の一つ一つを理解しようとする姿勢や、言葉を選んで私に語ってくれる姿を目の当たりにすると、適当に喋ったら自分の浅はかな考えなんてすぐに見透かされる、そんな気がしてました。

「また来なよ」

「はい、また来ます」

次に会った時は、少しは成長した姿を見せたいものです。