6月からリモートワークが解除され、週何回か通勤するようになった。そこでようやく気づいたのだが、バイト先の隣のビルが、ちょうど一年前、就活していたときに会社説明会で訪れた所だった。
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大学時代は「大学院に進学するか、作家活動をするか」ズルズルと時間をかけて悩み続けていた。大学4年の5月下旬、ふと思い立って「就活してみようかな」と、今まで全く考えたことがなかった道を選択してみた。
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その会社に、特に思い出深い何かがあるとかはない。
しかしその頃、たった数週間の就活のストレスから帯状疱疹が足に広がろうとしていた。季節はちょうど、鬱々とした梅雨にさしかかっている頃で、傘をさしてるのにも関わらず、よく雨に濡れながら帰っていた。
高い交通費を払って行った割にはつまらない会社説明会。何を聞かれてるのか正直難しくてよく分からなかったグループディスカッション。うまく答えられない面接。
何もかもを、投げ出したくなるような時期だった(笑)
なぜ私は就活しているのか、と不思議に思ってきた頃、「働く」ってまじで何?と、本格的に分からなくなってきて、図書館の「働くとはどういうことか」みたいな、なんか岩波書房?のそういう系の本を借りまくっていた。結局、疲れて読めずに寝落ちする日が重なり、そのまま期限になったので、ほぼ読まずに返却したが。
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帯状疱疹があらわれはじめ、皮膚科に行き、お医者さんに「若いのに大変ねぇ」(帯状疱疹は50代~かかりやすいとか)と言われた。
で、「別に自分を複雑にする必要なくない?もっとシンプルに生きてもいいんじゃないの?」と、もう一人の自分が話しかけてきた。
で、就活はやめた(早っ)。結局、1か月ちょっとの就活だった。
何をするにしても、「画家になりたい」と心のどこかで思っていて、それが自分の本心なのかもしれない。別に、周りと合わせて自分の心を複雑にする必要はないし、シンプルに「やりたいからやる」というマインドでもいいか、と思ったのだ。
しかし、やっぱりそれでも不安だったから、地元の幼馴染みに電話して
「就活も院進もやめるー。やっぱし画家になりたいなーって思ったー」
と、報告したところ、
「別に不思議じゃない。でも、なんかもっと、そう、あなたは卒業したらワーホリとか…なんか海外に行きそう。日本出た方がよさそう」
との一言。自信喪失中だったので、照れた。
もちろん、今は状況が状況だし、お金も先々月に色々あったため貯金も奨学金もスッカラカンだ(2020年現在)。実行するのは2、3年後あたりになるかもしれない。
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今思うに、「競争すること」が元来嫌いで苦手なので、就活も院進もしなくてよかった気がする。人が周りにいると、なぜか焦ってしまうし、自分を見失うことも多いから。
「ゴタゴタ考えず、シンプルに生きよう」
そう思った私は新宿をあとにした。
一年後、今度は「画家を目指すフリーター」として新宿に通勤している。
「一年前、なんか無駄に頑張ってたね~」
なんて思いながら、今日もそのビルを見上げる。でも、ゴタゴタ考えてた時期があったから今があるのだから、無駄ではないとも思っている。