近くに住んでいる叔母・やっこちゃんの家に泊まった時、夜遅くまで話が弾みました。
毎回、やっこちゃんと彼女の旦那さんとは、旅や旅行の話で盛り上がります。旦那さんが車で旅することについて話し始めたのをきっかけに、話題はキャンピングカーに移りました。
やっこちゃん
「キャンピングカーって憧れるばいね〜」
旦那さん
「そうやね。退職したらキャンピングカー買って北海道とかまわりたいね」
やっこちゃん
「あ、聞いた？みもり、録音しとって。証拠証拠(笑)」
私
「承知した、証人になっちゃる」
やっこちゃん
「お父さん(＝私の祖父)もね、そがんことば言いよったとけど、結局実行せんやったとよね〜」
私
「え？！誰が？じいちゃんがそい言ったと？！」
驚くのも無理はありません。
私のイメージする祖父は、なんと言っても、そんなんじゃないからだ。
やっこちゃん
「退職したら、ワゴンカーば買って、布団ばのっけて日本一周するって言いよったとよ」
私
「うっそ〜〜〜〜！！！」
やっこちゃん
「あと、髭ばなご〜う伸ばすても言いよった」
私
「うっそ〜〜〜〜！！！」
やっこちゃん
「そいで、その髭ば頭にのせるとやろ？ってさっちゃん(＝叔母の姉)とからかいよったとよ」
私
「ウケる！！」
驚きの連続である。
18歳まで一緒に過ごしてきた家族であっても、知らない一面があるものである。
私から見た祖父は、まず「ワゴンカーを買って布団をつんで日本一周の旅に出る」なんて、考えつかなさそうな人なのだ。
寡黙で、頑固で、生真面目な人。
それが私の知る祖父だ。
ただ、確かに「柔らかい部分」も垣間見えることもあったな、と今振り返ると思います。
私が20歳になって、祖父とお酒を呑み交わしていた時のこと。
「みもり、大学ば卒業したらどがんすっとや？」
と、祖父が聞いてきた。
私は、お酒が入って気が緩んでいたのか、
「う〜ん、東京に出て、絵ば描いて、画家活動しよっかなぁって思…」
と口走ってしまい、「しまった」と思った。
このあと絶っっっ対に
「そがんフラフラしよらんで、こっち（地元）に戻って就職せんか！！」
と、言われると思ったからだ。
しかし、
「まぁ、やってみるぎよかたい。東京に出てもよかし、そこで公募展とかに出してみるのもよかたい」
と、祖父は答えたのだ。
その時は心底、驚いた。
祖父の口から、まさかそんな言葉が出るとは思っていなかった。
祖父もお酒を呑んでいたから、いつもより穏やかな気分になっていただけかもしれない。しかし、今思えば、これも祖父の一面だったのかもしれない。
のびのびとした発想を、実は持っている人なんだけど、やっぱり「昔の人」だから、型にはまらなきゃいけないことがたくさんあったのかもしれないね。とやっこちゃんは話していました。家庭もあるし、仕事もやんなきゃだし。
私が学生の時、「若い時はどんどん遠くへ行け」と旅をすすめてくれたのも、そういえば祖父でした。もしかしたら、祖父がやりたくてもできなかったことなのかもしれません。
余談。
私は、家族を知ることは、自分にとっていいことだと思っています。
家族が子供だった時、若かりし頃、嫁ぐ前、会ったことがない曽祖父母のこと、家のまわりのこと、時代、などなど。いろんな人の立場から、知っているようで知らない家族の一面を探るのが楽しくもあるのです。また純粋に、ファミリーヒストリーを聞くのは面白い。
自分を見失いそうになる時、遠くにいる故郷や家族と触れ合うと、自分のルーツや魂に出会う気がします。まだまだ不安定な自分は、家族のことや家族の歴史を知ることで、救われいている部分があったりするのです。
今回も、祖父の意外な一面を知って、やっぱり私は祖父の孫だったんだなァと思いました。